気迫!

3対3の同点である。
試合は既に延長戦に入った。
延長戦になると「後(あと)攻め」のほうが有利だ。
その「後(あと)攻め」の攻撃になった。
11回の裏である。
バッターが打席に立った。
妙に落ち着いている。
なんだ、この落ち着きは。
開き直ったのか。
それとも、
暑さと疲れで頭がボーッとしているのか。
しかし、目は鋭く光っている。
ぎんぎらに光っている。
このとき、私は感じた。
こいつは、どでかいことをやるゾ。
その瞬間、その「まさか」が起きた。

彼の放った打球は右中間を真っ二つ。
見事な三塁打。

そのあと、彼はサヨナラのホームを踏んだ。

彼は、私の予感通りのことをしてくれた。
でも、これは奇跡ではない。
彼が打席に立ったときから、
この結末を予感していた。
だから、
私は撮影場所を変えることさえできなかった。
(攻撃側に場所を移すのが鉄則なのに)
私も不動のカメラマンとなった。
もう一度言う。
この結末は偶然ではない。
奇跡でもない。
すべては彼の実力だ。
日頃から培ってきた、
どでかい彼の「力」だ。
図太い精神力だ。
それが、
最後の、最後の土壇場に出たのである。
私は今でもそう思っている。
ただ、彼のために、
サヨナラの最後のシーンが、
攻撃側で撮れなかったのが悔やまれる。


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